[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
●原発震災
日本地震学界正会員で神戸大教授(地震学)の石橋克彦氏は1997年、「大地震によって原発事故が起きて大量の放射性物質がまき散らされると、壊滅的な被害が出る」とし、「原発震災」という言葉を初めて提示しました。
石橋教授は2005年2月、衆院予算委員会の公聴会に公述人として出席し、マグニチュード(M)8クラスの巨大地震・東海地震の想定震源域の真上にある「中部電力浜岡原発」(静岡県御前崎市)について「東海地震で大事故が起きれば、首都圏まで放射能が達する“原発震災”となる恐れがある」と警告。日本列島全体が地震の活動期に入りつつあると指摘し、「複雑高度に文明化された国土と社会が、人類史上初めて大地震に直撃される」と述べました。
大地震が起きると、地盤が数メートルはね上がり、
施設全体が突き上げられる恐れがあるという浜岡原発
(写真:巨大地震にどう立ち向かうかより)
浜岡原発については「中部電力は耐えられると言っているが、地震学者としては想定している揺れが不十分だと思う。万一、核分裂生成物が外部に放出されると、東海から首都圏に至る広大な地域に被害が及び、死者が10万人に達する恐れもある」と指摘しました。
●浜岡原発は大丈夫なのか?
2005年2月、東京都内で開かれた土木学会と日本建築学会の共催による巨大地震対策のシンポジウムで、中部電力の担当者が、東海地震の想定震源域の真上にある浜岡原発で予想される揺れに関して発表すると、若い研究者はこう質問しました。
「真下にアスペリティーがある場合を検討しなくていいのでしょうか」
東海地震は、陸のプレート(岩板)とその下に潜り込むフィリピン海プレートの境界で発生しますが、特に強く密着している部分をアスペリティーと呼びます。アスペリティーは強い揺れを引き起こします。国の中央防災会議の専門調査会が東海地震の想定に使った震源モデルでは、浜名湖付近など6カ所にアスぺリティーを想定していますが、浜岡原発直下には想定していません。
中部電力担当者は、浜岡原発での揺れの加速度は同原発の耐震設計に用いた600ガルを下回ると発表しました。しかし、質問に対し、「(アスペリティーの位置については)専門調査会の議論で根拠は示されている」と、言葉少なに答えるにとどまりました。
国の想定では、浜岡付近の揺れは395ガルですが、アスペリティー直上の地域では1000ガル近くに達するそうです。中部電力は「国の想定した場所以外にアスペリティーはないだろうと考えている」と説明していますが、専門調査会の委員を務めた入倉孝次郎・京都大副学長は「これ(国の想定)しかないとは思っていない。中部電力にも、アスペリティーをより近くに置いてみるなど、浜岡原発に影響が大きい置き方を検討する必要があると申し上げている」と指摘しています。
中部電力は05年1月、突然、浜岡原発を1000ガルまで耐えられるよう耐震補強すると発表しました。ただ、03年5月に宮城県沖で発生したM7・1の地震では、同県牡鹿町(現石巻市)で1112ガルを記録しており、浜岡原発付近でも1000ガル以上の地震が発生する可能性は否定できません。
●「想定外」の揺れ
国の「原子炉立地審査指針」は、原発を設置する場所の条件として「大きな事故の誘因となるような(大地震など)事象が過去になかったことはもちろん、将来も考えられないこと」を挙げています。しかし、日本で大地震の恐れがない地域はありません。このため、国は原発の耐震指針で、それぞれの場所で想定される最大の地震にも耐えられる設計を求めています。
国や電力会社は「およそ現実的ではない地震」を想定し、それに十分に耐える設計をしてきたと説明しています。しかし、07年の新潟県中越沖地震では、想定の約2・5倍もの揺れが柏崎刈羽原子力発電所を襲い、数多くのトラブルを引き起こしました。
原発が想定を超える揺れに襲われたのは今回が初めてではありません。東北電力女川原発は03年5月の三陸南地震と05年8月の宮城県沖の地震で、北陸電力志賀原発も今年3月の能登半島地震で、それぞれ想定を上回る揺れに見舞われました。日本各地の原発が「想定外の地震」に襲われる可能性があることは否定できない現状なのです。