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資源や領土など経済権益(利権)にまつわる争いや宗教対立、民族対立、国家建設など様々な要因で世界中に紛争が絶えませんが、食料(糧)問題も社会の大きな不安定要素の一つです。地球温暖化などを背景に異常気象が激化し、世界の農漁業に深刻な影響が出れば、食料問題が大きな紛争の遠因になる可能性も否定できません。

また、現在、世界各地で毎日、飢餓によって大量の死者が出ている状況そのものも非常に大きな問題です。

そして、日本が食料危機におちいることも決して絵空事ではありません……。

●世界の7人に1人(8億5000万人)が飢餓

世界には全ての人々が食べるのに十分な食糧があります。

それにもかかわらず、飢えは世界第1位の死亡原因です。国連世界食糧計画(WFP)によると、07年現在、全世界で8億5000万人を超える人々が飢えに苦しんでいます。これは世界の全人口の7人に1人に相当します。

このうち、3億5000万人以上が子どもたちです。5秒に1人、5歳未満の子どもが飢えが原因で亡くなっています

1日1ドル以下で生活する貧困状態の人は約12億人います。

●食糧不足の原因は…

食糧不足の要因には、人口増加、食生活の変化、農業生産性の低下、異常気象などが挙げられます。

人口の増加

1995年に57億人だった世界の人口は2010年1月現在、約68億人です。

世界の人口は、1分に140人、1日で20万人、1年で8千万人、増えています。
世界中で、1年に6千万人が亡くなり、1億4千万人が産まれます。

そして、2025年には80億人、2050年には91億人に増えると予測されています。

食生活の変化

ここ数十年で日本人の食生活が大きく変化しました。米の消費が減り、肉類や油脂類(サラダオイルなど)の消費が増えたのです。

◆1960年から2001年における日本の食生活の変化◆

 ・ご飯…1日に茶わん約5杯⇒約3杯に
 ・牛肉(150gのステーキ換算)…50日に1度のごちそう⇒週に1度の普通の食事に
 ・牛乳…1週間にコップ1杯⇒2日に1杯に

この食生活の変化が世界の“台所”にも負担をかけています。

食べ過ぎ食べ残し
牛肉1kgを食べようとすると、牛のエサとして8~10kgのトウモロコシや大豆などの穀物が必要となります。豚肉1kgには4~5kg、鶏肉には2~3kgの穀物が必要です。このため、日本を含む先進国(人口は世界の5分の1)が世界の穀物の半分を消費し、その消費量の65%を牛、豚、鶏などの家畜のエサにしています

日本を含む先進国(中でも食料輸入国)での①食生活の変化②食べ過ぎ③食べ残し――が先進国による買い占め状況につながり、世界の食料バランスを崩しています。これが発展途上国の飢餓に大きく関係しているのです。

●食べ残し大国、日本

日本は、世界各地から食料を輸入し、世界の食料バランスを崩すほどに大量購入する一方で、食べものを大量に無駄にしています。食料の「生産→加工→消費」の過程のなかで、廃棄される割合が世界一高いのではないかと言われ、まだ食べられる食料の2、3割が廃棄されていると推測されています。

東京都清掃局「清掃のあらまし1999」によると、家庭ごみの約42%が生ごみで、そのうち約3割は手付かずのまま捨てられています。

また、日本で出る1年間の生ゴミ1940万tのうち、家庭から出る生ゴミは1000万t(厚生省調べ)で、これは655万人が1年間食べていける量なのです。

●低い! 日本の食料自給率

現在の日本人の食生活は海外からの輸入で成り立っています。他の先進国は食料自給率の向上に取り組んできましたが、日本は食料供給を輸入に頼るようになりました。

その結果、日本の食料自給率は低下傾向を続け、2000年度の食料自給率は40%、穀物自給率は28%で、先進国の中で最低です。ちなみに、1990年代から餓死者が続出している北朝鮮でも、食料自給率は約72%(国連食糧農業機関調べ)です。日本は食料の輸入によって「飽食」を維持していますが、財源不足で食料を輸入できず餓死者が出ている北朝鮮よりも食料自給率が低いのです。将来、気候変動による国際的な大規模凶作や国際紛争などで食料が輸入できなくなったら、どうなるのでしょうか…。

日本の農産物の食料自給率のうつりかわり


◆2006年度の日本の食料自給率◆
豆類:7%▼小麦:13%▼油脂類:13%▼砂糖類:32%▼果実:39%▼肉類:55%
魚介類(食用) :59%▼牛乳・乳製品:66%▼海藻類:67%▼野菜:79%▼いも類:80%

主な国の穀物自給率
※人口1億人以上の主な国の穀物自給率(2002年)


日本の果物は…
※日本の「果実」の自給率は
わずか39%(06年度)

日本の業者は、貧しい国から食料を安く買って、安く売ります。このため、途上国の農家は、これまで作っていたさまざまな農作物の生産をやめ、販売用(輸出用)の農作物にしぼった生産に切り替えていきます。このような農作物には、コーヒーやカカオ、茶、綿花、ピーナツなどがあり、農家にとってもその国にとっても大事な収入源となります。

しかし、単一作物しか生産しないと、干ばつや冷害で凶作になった場合、収入も食料もなくなり、飢饉(ききん)に陥ってしまいます。

また、農地拡大のために貴重な森林を伐採したり、虫食いを避けて作物の見た目をよくしたり、長期輸送に耐えるようにしたりするため、農薬を大量に使用し、環境や健康にも悪影響を及ぼしています。


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